企業の経営者や人事・総務の担当者向けに年末調整を実施する目的や、手続きの流れを解説します。会社として正しく納税するため、年末調整に対する理解を深めていきましょう。
2022年(令和4年)4月にあった源泉所得税の税制改正により、年末調整にかかる変更が大きく分けて3点発生しました。
この3点はそれぞれ、2022年での年末調整で対応が必要な変更点が1つ、2023年での年末調整で対応が必要な変更点が2つとなっています。
まずは、2022年の年末調整に影響がある変更点について解説します。
これまでの変更点をおさらい
最近は税制改正が頻繁におこなわれているため、昨年と同じでは手続き適正でないというケースが多くあります。
近年の変更点を改めて確認し、変更点をアップデートして漏れがないか確認しておきましょう。
2022年(令和4年)の年末調整の変更点とポイント
2022年(令和4年)4月にあった源泉所得税の税制改正により、年末調整にかかる変更が発生しました。
まずは、2022年の年末調整に影響がある変更点について解説します。
1.控除証明書の電子データ提出の適用範囲が拡大
2020年以降、年末調整で提出する控除証明のうち、控除証明書3つ「生命保険」「地震保険」「住宅ローン控除証明書」などが電子データで提出可能となりましたが、
2022年の税法改正で新たに「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」の控除証明についても電子データでの提出が可能になります。
2023年(令和5年)の年末調整での変更予定を先取りで確認
2022年の税制改正により、2023年の年末調整の手続きに大きく変更がある予定が2つあります。
1. 住宅ローン控除の控除率、適用期間の変更
住宅ローン控除の適用期限は令和3年の12月31日とされていましたが、令和4年の税制改正で令和7年の12月31日まで期限が延長されることになりました。
さらに、住宅ローンの上限額や控除額が変更となりました。
2022年から2025年までの期間で入居した場合の要件が下記のように変更になっています。
①住宅ローン控除率が1%→0.7%に引き下げ
②新築住宅の控除期間が10年→13年に延長(中古住宅は現行の10年で据え置き)
③省エネ住宅の借入上限が上乗せ、一方一般住宅の借入上限が引き下げ
④住宅ローン控除の制度が適用される所得要件が合計所得金額3,000万円以下→2,000万円以下に引き下げ
⑤既存住宅の適用対象となる築年数の要件が廃止
⑥新築住宅の適用床面積緩和要件(50㎡→40㎡)の適用期限が令和5年12月31日までに延長(ただし、合計所得金額が1,000万円以下の場合に限る)
⑦控除余剰額の住民税からの控除に対する上限額が13.65万円→9.75万円に引き下げ
⑧借入金残高証明書の添付が不要に
2. 非居住扶養親族の扶養控除の適用が除外されます。
親族から国外に居住する「非居住者」の親族のうち、控除の対象となる扶養家族の範囲から「30歳以上70歳未満」の非居住者が除外されます。
ただし、30歳以上70歳未満の非居住者でも下記に該当する人は現行の通り扶養控除の対象となります。
①留学生
②障がい者
③扶養控除の適用を受けようとする居住者から生活費や教育費等で38万円以上の送金を受けけている者
また、①に該当する場合は扶養控除等申告書の受領時に留学ビザ等の相当書類を、③に該当する場合は年末調整時に送金を証明する確認書類を提出して適用対象者である証明をおこなう必要があります。②に関しては提出書類は不要です。
2021年度(令和3年)の変更点
令和3年度の年末調整の大きな変更点は押印が不要になったことです。以下の書類の押印が不要になりました。
・ 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・給与所得者の保険料控除申告書
・ 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
・住宅借入金等特別控除証明書(いわゆる「住宅ローン控除証明書」)
まとめ
近年は毎年様式の変更が発生しています。また、2022年の年末調整での変更点は控除証明書の電子申告適用範囲も拡大しました。
来年2023年は大きな変更が複数想定されています。
変更予定の内容もしっかりアップデートして、余裕を持って対応できるようしましょう。