「成長と分配の好循環」の実現に向けて、11月19日に新たな経済対策が閣議決定されますが、この中で日本経済を成長軌道に乗せるため持続可能性や「人」を重視し、新たな投資や成長につなげる方向性が示されると思われます。
コロナ禍で顕在化した課題の大きなひとつに、
非正規・女性の困窮などがあります。
2010年以降、非正規雇用労働者は増加が続き、2020年は減少しましたが、非正規雇用の占める割合は雇用者全体の37.2%にのぼります。
自由に働ける柔軟性を求めて非正規雇用を選ぶ人が増えているのは時代の流れでしたが、
コロナ禍で失業や労働時間の縮減といった影響を受けたのも非正規の働き手で、安全網のない不安定さが浮き彫りになりました。
「M字カーブ」
いわゆる「M字カーブ」近年、女性の就業率の向上によって、M字の谷の部分が浅くなりM字カーブは解消しつつあります。
その中で、女性の正規雇用率については、20代後半でピークを迎えて低下するL字カーブになっているといわれており、30代以降の就業が非正規雇用となる傾向があります。これは、結婚・出産のほか、子どもの幼稚園・保育園入園や小学校入学などのライフイベントを重ねるにつれて非正規雇用という選択をしていることが考えられます。
女性の社会進出が進み家庭と仕事を両立しようとする女性の意欲が高まっていますが、正規雇用を望んだとしても育児や家庭の両立のために、時間の都合がつきやすい非正規雇用を選択しているという背景がみてとれます。
成長と分配の好循環に向けて「人」への投資の強化が始まります
非正規の正社員への雇用形態の転換や、同一労働同一賃金をはじめとする処遇改善が進めば、モチベーションの向上や収入の増加が見込まれ、消費の活発化につながることが期待されます。そのため、全体の3割以上を占める非正規の処遇改善、女性の活躍推進はこれからの好循環を生むために必要不可欠な取り組みになるといえるでしょう。
こうした取り組みに活用できるのが、今回ご紹介する「キャリアアップ助成金」です。
キャリアアップ助成金の対象となる労働者は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用の労働者で、取り組み内容によって以下7つのコース
キャリアアップ助成金の対象となる労働者は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用の労働者で、取り組み内容によって以下7つのコースに分かれています。
- 正社員化コース:非正規雇用者の正規雇用への転換または直接雇用
- 障害者正社員化コース:障害のある非正規雇用者を正規雇用労働者等へ転換
- 賃金規定等改定コース:すべてまたは一部の非正規雇用者の基本給の賃金規定等を増額改定
- 賃金規定等共通化コース:非正規雇用者・正規雇用者の職務等に応じた賃金規定の共通化
- 諸手当制度等共通化コース:非正規雇用者・正規雇用者の諸手当の制度の共通化、または非正規雇用者を対象とする「法定外の健康診断制度」を新設し、延べ4人以上実施
- 選択的適用拡大導入時処遇改善コース:非正規雇用者の社会保険の適用拡大や基本給の増額
- 短時間労働者労働時間延長コース:非正規雇用者における労働時間の延長と社会保険適用
政府は、全ての女性が活躍できる社会を実現し、男女間の賃金格差の解消を図るため、企業側に短時間正社員の導入など多様な働き方の許容を求めており、令和3年度から正社員コースの加算措置の対象に短時間正社員制度を追加しています。