2025年6月13日、自民党・公明党・立憲民主党などの賛成多数により、「年金制度改革関連法」が参議院本会議で可決・成立しました。この改正は、現行の年金制度におけるさまざまな課題に対応するためのものであり、現役世代・高齢者・事業者すべてに影響を及ぼす重要な法改正です。
本記事では、改正法の成立背景、具体的に変わるポイント、企業や個人への影響、そして今後のスケジュールについて、網羅的に解説します。
年金制度改革関連法とは?その背景と目的
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少子高齢化が急速に進行する日本では、年金制度の持続可能性が常に課題となってきました。今回の改正は、以下の課題に対応するために行われました。
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現役世代の負担増の抑制
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高齢者間の年金格差の是正
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雇用形態に関わらない公平な制度設計
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年金財政の安定化と中長期的な持続性の確保
改正の主な目的
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働く高齢者の活躍支援
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パート・非正規雇用者への厚生年金適用拡大
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受給開始年齢の柔軟化
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企業の制度対応の明確化とデジタル化推進
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2025年の年金制度改革で変わる主なポイント
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① 厚生年金の適用拡大(適用基準の緩和)
パートやアルバイト等の短時間労働者への厚生年金加入要件がさらに緩和されます。
【改正前】
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勤務先の従業員数が「101人以上」
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週20時間以上、月額賃金88,000円以上など
【改正後】
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企業規模要件が撤廃
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要件を満たせばすべての企業で適用対象に
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② 繰下げ受給年齢の見直し(70歳超→75歳まで可能に)
年金受給の繰下げ受給の上限年齢が、70歳から75歳に拡大されます。
これにより、75歳まで受給を繰り下げると、最大84%の増額が可能となります。
③ 在職老齢年金制度の見直し
60歳以上の働く高齢者に適用される在職老齢年金制度の収入制限が緩和され、働きながらでも年金を受け取りやすくなります。
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月収と年金支給額を合算して28万円を超えるとカットされる制度の見直し
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一定額までの収入なら減額されない方向へ
④ 年金記録のデジタル化促進・マイナンバーとの連携強化
マイナンバーとの連携が強化され、年金記録の管理が一元化されます。
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年金加入歴の確認が簡単に
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転職時の手続きも円滑化
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手続きのオンライン化も推進
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年金制度改革の影響は?企業・個人それぞれの視点から
【個人】働き方と受給戦略に柔軟性が生まれる
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非正規でも老後資金の積立がしやすくなる
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働きながら受給する選択肢が増える
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自分に合った年金受給開始年齢を選択できる
【企業】社会保険適用拡大への対応が必要
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すべての事業者に厚生年金加入義務が広がる
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社会保険手続きのデジタル対応が求められる
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従業員の負担説明・教育が必要に
年金制度改革はいつから?施行時期と今後のスケジュール
改正内容 | 施行予定時期 |
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厚生年金適用拡大 | 2026年10月から段階的に実施 |
繰下げ受給75歳対応 | 2025年4月から開始 |
在職老齢年金制度の見直し | 2026年中の施行を想定 |
年金記録デジタル化・マイナンバー連携強化 | 2025年度より順次整備 |
年金制度改革は「個人の備え」と「企業の体制整備」がカギ
2025年の年金制度改革は、少子高齢化と雇用の多様化に対応する大きな一歩です。しかし、これは制度の「基盤整備」に過ぎません。個人としては、自分に合った働き方と受給戦略の構築が必要です。
また、企業は社会保険加入義務の拡大に対する法的対応と、労務管理体制の見直しが求められます。
【まとめ】年金制度改革2025年、5つの重要ポイント
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厚生年金の加入対象拡大(企業規模不問へ)
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繰下げ受給上限が75歳に延長され年金増額可
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在職老齢年金制度の見直しで就労促進
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年金記録のデジタル化とマイナンバー連携強化
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個人・企業ともに準備が不可欠
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年金制度改革に関するよくある質問(FAQ)
Q1:パートでも厚生年金に入らないといけないの?
→ 2026年以降、条件を満たせば企業規模に関わらず加入対象になります。
Q2:75歳まで年金を繰り下げると損?得?
→ 長生きする可能性が高ければ繰下げは得になります。ただし、個人の健康状況やライフプランに応じて慎重に判断が必要です。
Q3:企業側の負担は増える?
→ 社会保険料の事業主負担が増加します。業務フローや労務制度の見直しが必要です。
年金改革2025に向けて準備するべきこと
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フリーランスや非正規労働者:年金制度の変更内容を早めに把握
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高齢者:繰下げ受給や就労の選択肢を再検討
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企業:社保制度・労務体制の見直しと人件費予測
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