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社会保険労務士

2026年10月施行 カスハラと求職者セクハラの義務化 会社が行う対策

飯塚匡春

2026.10.19

カスハラ・求職者セクハラ対策義務化|2026年10月施行と企業の対応

2026年10月1日から、カスタマーハラスメントと求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が、事業主の義務となりました。中小企業や、従業員が10人未満の事業場も対象です。[1]
「苦情が来たら店長が対応する」「セクハラ禁止は就業規則に書いてある」。こうした対応だけでは、新しい制度に必要な仕組みがそろっているとは限りません。従業員が顧客から被害を受けた場合と、自社の従業員が応募者に性的な言動をした場合では、保護する相手も、相談の受け方も異なるためです。
この記事では、経営者・人事担当者の方に向けて、法改正で何が変わったのか、どこから確認すればよいのかを整理します。

カスハラと求職者セクハラでは根拠となる法律が異なる

カスハラ対策の根拠は労働施策総合推進法、求職者等へのセクハラ対策の根拠は男女雇用機会均等法です。いずれも2026年10月1日からの義務ですが、同じ法律による一つの制度ではありません。[1][2][3]

■確認する点 カスハラ 求職者等へのセクハラ

■主に保護する相手 自社で働く従業員 応募者や実習参加者など

■問題となる行為 顧客・取引先等による許容範囲を超えた言動 自社の従業員による性的な言動

■対策の中心 安全確保と顧客対応の引継ぎ 採用・実習のルールと相談への対応

■窓口の周知先 管理職を含む従業員 求職者等。社内の担当者も運用を共有

顧客から従業員への性的な発言については、職場のセクハラ対策も問題になります。名称だけで担当部署を分けず、被害の内容に応じて連携できるようにしておきましょう。

カスハラ対策の義務化で会社に求められること

〇方針と現場での対処方法を決める
顧客等からの著しい迷惑行為に会社として対応し、従業員を保護する方針を明らかにします。あわせて、どのような行為が問題になるのか、発生したときに誰へ報告し、誰が引き継ぐのかを、管理職を含む従業員に周知します。[2]
例えば、レジ担当者が暴言を受けた場合に、交代できる責任者が不明では現場は動けません。店舗ごと、時間帯ごとに、責任者が不在のときの連絡先まで決めることが実務上の出発点です。

〇相談窓口と事後対応を整える
相談窓口をあらかじめ定め、従業員に知らせます。「カスハラと確定してから受け付ける」という運用は適切ではありません。該当するか微妙な段階や、発生のおそれがある段階でも広く相談に対応します。[2]
事案が起きたら、事実関係を確認し、被害を受けた従業員に配慮します。担当交代、接触の回避、心身の不調への支援など、状況に合った対応が必要です。対応後は、商品説明や受付方法などに改善できる点がないかも検討します。

■特に悪質な事案への対応を別に決める
通常の苦情対応に加え、過度な要求を繰り返すなど、特に悪質と考えられるものへの対処方針と実行できる体制の整備も必要です。[2]
暴力や脅迫が起きても、現場に「丁寧に説明し続けて」と指示するだけでは従業員を守れません。退避、警察への通報、責任者への交代、弁護士への相談などを、状況に応じて実行できるようにします。
プライバシーの保護と、相談・調査協力等を理由とする従業員への不利益な取扱いの禁止についても、ルールを定めて周知する必要があります。

求職者セクハラ対策は採用ページと面接運用まで点検する

求職者等へのセクハラ対策では、禁止方針や行為者への対処を文書に定めるだけでなく、求職活動等に関するルールを明確にし、従業員と求職者等の双方に周知することが求められます。[3]
対象は採用面接だけではありません。会社説明会、OB・OG訪問、インターンシップ、教育実習・看護実習なども含まれます。オンラインでのやり取りや、通常の職場以外での活動も確認対象です。
会社では、次のような点を具体的に決めます。
• 面談を行う時間と場所、担当者の体制
• 応募者との連絡に使用するメールやSNS
• 性的な質問、接触、執拗な私的な誘いの禁止
• 応募者や実習参加者が利用できる相談窓口
• 相談後の事実確認、保護措置、行為者への対応
例えば、採用担当者が私用SNSで応募者を食事に誘っている場合、会社がやり取りを把握できず、相談も届きにくくなります。業務連絡を会社指定の手段に集約することは、有効な運用例です。

中小企業と従業員10人未満の事業場も対象

「就業規則の届出義務がないので、ハラスメント対策も不要」という理解は誤りです。常時10人以上という基準は、労働基準法上の就業規則の作成・届出に関する基準です。今回の防止措置義務に、その人数による免除はありません。[1][4]
また、保護の対象となる従業員は正社員だけではありません。パート・アルバイト、契約社員も含まれます。受入派遣労働者についても派遣先に措置義務があるため、派遣元との連絡方法を確認してください。[2][3]
人事部のない小さな会社でも、担当者と代替の連絡先を決め、相談を受けた後の判断を社長一人の記憶に頼らず記録に残すことから始められます。

会社が最初に確認したい六つの項目

1. 現在の規程が、顧客等からの被害と求職者等への加害の両方を扱っているか。
2. カスハラ発生時の報告先、担当交代、緊急時の行動が決まっているか。
3. 特に悪質な事案について、対応制限や専門家への相談を判断する人が決まっているか。
4. 求職者等との面談場所、連絡手段などのルールが明確か。
5. 従業員と求職者等に、それぞれ利用できる相談窓口を周知しているか。
6. 事実確認、プライバシー保護、再発防止まで実行できるか。
不足があれば、窓口と緊急時の連絡経路を先に確保し、その後に規程・マニュアル・周知文の内容をそろえていきます。すでに施行されているため、次回の定例改定まで待たずに確認することをお勧めします。

よくある質問

■以前からセクハラ禁止と書いてあれば改定は不要ですか
既存条文が求職者等への行為まで対象にしているか、行為者への対処、採用ルール、求職者等向けの窓口周知まで整っているかを確認します。必ず全文を書き換える必要はありませんが、従業員間のセクハラだけを想定した規程では不足することがあります。

■従業員研修を一度実施すれば完了しますか
研修は周知・啓発の方法の一つです。相談窓口や対応体制が利用できる状態になっていることも必要です。担当者が交代した場合や新しく採用した従業員にも、必要な内容が伝わる運用にしてください。

■店頭にカスハラ禁止のポスターを貼れば足りますか
ポスターは対外的な周知に役立ちますが、それだけで社内の対処方針、窓口、事後対応が整うわけではありません。なお、国の指針におけるカスハラ方針の顧客への周知は効果的な取組として示されており、従業員への周知義務と区別して理解します。条例や支援制度の要件は別に確認が必要です。

■イイズカ事務所へのご相談
社会保険労務士法人イイズカ事務所では、現行の就業規則・ハラスメント規程を確認し、業種や採用方法に合わせた規程、対応マニュアル、社内外への周知文の整備をご支援します。
「何が不足しているのか分からない」という場合は、現在使用している規程と、顧客対応・採用の流れをお知らせください。ホームページのお問い合わせ窓口から「ハラスメント対策の点検希望」とご連絡いただくと、ご相談内容が伝わりやすくなります。
あわせて読みたい記事
• カスハラの判断基準と具体例
• カスハラ対策マニュアルの作り方
• 求職者セクハラ対策と面接ルール
• 就業規則と相談窓口の整備手順
参考資料
• [1] 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
• [2] 厚生労働省告示第51号 カスタマーハラスメント防止指針 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=75ac0814&dataType=0&pageNo=1
• [3] 厚生労働省告示第52号 求職者等セクシュアルハラスメント防止指針 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73ac0815&dataType=0&pageNo=1
• [4] 北海道労働局「就業規則を作成・届出、周知しましょう」https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku02/kantokuka_hourei_02/_119904.html
法令・公表資料の確認日:2026年10月18日

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