「年収の壁」とは?106万円・130万円問題をおさらい
2025年度(令和7年度)、政府は中小企業を中心に深刻化する「年収の壁」問題に対し、新たな支援策として【年収の壁突破 総合対策促進奨励金】を展開しています。これは短時間労働者(パート・アルバイト等)の労働時間延長や収入増加をためらわせる「106万円・130万円の壁」への実務的対策を企業側から促進するための助成制度です。
本記事では、この奨励金制度の概要、対象要件、補助額、導入方法、よくある質問などを分かりやすく解説します。人手不足に悩む企業や、パートタイマーの雇用安定を図りたい企業担当者様にとって必見の内容です。
「年収の壁」とは?106万円・130万円問題をおさらい
非正規労働者が年間収入を一定額以上得ると、社会保険の被保険者となる必要があり、本人にとって手取りが減少するという問題が長年指摘されてきました。特に以下の2つが「年収の壁」として知られています。
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106万円の壁:社会保険(厚生年金・健康保険)への加入義務が生じる基準。企業規模が一定以上の場合、週20時間以上働き、かつ年収106万円を超えると加入対象となる。
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130万円の壁:扶養から外れ、本人が国民年金・国保に加入する必要がある基準。
この壁のために、労働者本人が「これ以上働きたくない」「時給を上げないで」と申し出る事態が発生し、企業側にも人材確保の大きな障害となっています。
💡「年収の壁突破 総合対策促進奨励金」とは?
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厚生労働省が主導するこの奨励金制度は、企業が短時間労働者の就業調整を解消する具体策を導入することにより、1人あたり最大【20万円】の奨励金が支給される制度です。
【対象となる取組内容(いずれか1つ以上)】
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社会保険加入支援手当の導入
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社会保険の加入により手取り減少が生じる従業員へ独自手当を支給
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賃金引上げ等による処遇改善
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時給アップ・賞与支給など収入増加の施策を行う
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キャリアアップ支援策
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正社員転換制度や研修支援制度の導入・強化
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労務管理見直し
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就業規則や勤務シフトの柔軟化により、年収制限を意識せず働ける環境整備
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支給要件と申請対象企業
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以下の要件を満たす企業が対象です:
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常時雇用する労働者数が300人以下の中小企業等
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対象となる**短時間労働者(被扶養者・被保険者になり得る者)**を複数雇用していること
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上記1〜4のいずれかの取組を2024年10月1日以降に実施していること
また、支給対象となる従業員が該当施策の恩恵を受けて、実際に働き方や収入を変化させた実績が必要です。
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💰奨励金の金額と申請の流れ
💰奨励金の金額と申請の流れ
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奨励金額:対象労働者1人あたり最大20万円(企業に支給)
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支給上限:1企業あたり最大200万円(例:10名まで)
【申請スケジュール(予定)】
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事業実施期間:2024年10月1日〜2025年12月31日
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申請受付:2025年4月頃〜順次受付開始(事後申請)
【申請方法】
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専用ポータルサイト(https://nenshunokabetoppa-syoureikin.jp/)から申請
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証憑資料:対象従業員の雇用契約書、賃金台帳、社内制度の改定書類など
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審査後、企業に振込支給(概ね2〜3か月)
🎯導入メリットと活用事例
【導入のメリット】
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パート・アルバイトの離職防止と定着率アップ
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人手不足の緩和と長期雇用への移行支援
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「130万円の壁」「106万円の壁」を意識せずに働ける職場づくり
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社会保険加入者の増加による福利厚生の安定化
【活用事例】
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スーパー:社会保険加入者へ月額1万円の手当支給+時給引上げ
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保育園:130万円超のパートへ賞与支給し離職防止
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医療機関:週20時間超勤務者への支援制度新設
❓よくある質問(FAQ)
Q1. 既に社会保険に加入しているパートにも使えますか?
→既加入者ではなく、新たに支援措置を通じて「壁」を超えた従業員が対象です。
Q2. 就業規則の変更だけでも申請可能?
→対象者の就業や収入が実際に変化していることが必要です。
🔗まとめ:2025年は「年収の壁」打破の好機!
2025年度の「年収の壁突破 総合対策促進奨励金」は、企業と労働者の双方にとって大きなメリットをもたらす制度です。慢性的な人材不足、短時間労働者の活用、労働環境の見直しといった課題に対し、費用支援という明確なメリットを得られます。
パート・アルバイトが安心して働き続けられる職場環境づくりのためにも、ぜひ本奨励金制度の活用を前向きに検討しましょう。