お役立ちブログ

社会保険労務士

求職者セクハラ対策の義務化 面接とインターンで会社が守るルール

飯塚匡春

2026.10.24

求職者セクハラ対策の義務化|2026年10月からの面接・実習ルール

2026年10月1日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務となりました。応募者はまだ従業員ではありませんが、会社は、安心して求職活動等を行えるように体制を整える必要があります。[1][2]

「採用担当者には常識があるので大丈夫」「学生の応募が少ないので関係ない」と考えている場合も、点検が必要です。中途採用やパート・アルバイトの採用のほか、インターンシップや各種実習も対象に含まれるためです。

この記事では、人事担当者だけでなく、面接に同席する管理職、実習指導者、OB・OG訪問を受ける従業員が知っておきたい対応をまとめます。

求職者等へのセクハラとは何か

求職者等へのセクハラは、自社の従業員による性的な言動によって、求職者等の求職活動や職業の選択に役立つ活動が阻害されるものをいいます。[2]

例えば、性的な事実を尋ねる質問、不要な身体接触、性的な関係の要求、執拗な私的な食事への誘いなどにより、本人が苦痛を感じ、活動に看過できない支障が生じる場合が問題となります。同性間も対象であり、被害を受ける方の性的指向やジェンダーアイデンティティは問いません。

採用や実習の評価に影響する立場からの言動は、相手が拒みにくいことに留意してください。
本人がその場で笑っていた、明確に拒否しなかったという事情だけで、問題がないとは判断できません。

面接以外にも広がる対象範囲

これらは指針に示された活動を踏まえた整理です。対面に限らず、オンライン面接やSNSでのやり取りも含まれます。また、会社の建物の外で行われたという理由だけで、対象から外れるわけではありません。[2]

学校や医療機関では、採用部門が把握していない実習受入れがないかも確認しましょう。「採用面接のマニュアル」だけを改定しても、実習の指導現場に伝わらない場合があります。

場面 会社が確認したい運用
新卒・中途・パート等の採用面接 質問内容、面接場所、応募者との連絡方法
会社説明会 少人数対応や終了後の個別の誘い
OB・OG訪問 受付方法、会う時間と場所、私用SNSの利用
インターンシップ 指導担当者、懇親の場、相談先の案内
教育実習・看護実習等 実習指導、評価と相談の経路、学校等との連携

会社が決めておきたい面談と連絡のルール

防止指針では、求職活動等に関するルールを明確にし、従業員と求職者等に周知・啓発することが求められています。以下は、そのための社内ルールの例です。[2]

■面談を行う時間と場所を指定する
会社指定の会議室や公式オンライン環境など、業務として管理できる方法を原則にします。自宅やホテル客室などの私的な場所での面談、飲酒を伴う選考は禁止する方法が考えられます。
複数名で面談することを原則とする場合は、一人しか対応できないときの承認方法と記録も決めます。「すべての面接を必ず二人以上で行う」という人数自体が、法律で全国一律に決まっているわけではありません。

■応募者への連絡を会社が管理できる手段にそろえる
会社メール、採用システム、会社指定の公式アカウントなどを使用するルールにします。連絡に使用してよいSNSの種類も明確にしてください。
私用SNSによる連絡を禁止する場合は、応募者に個人アカウントの交換を求めないこと、応募書類の連絡先を私的な誘いに使わないことも共有します。連絡先を集めるだけでなく、利用目的を守らせる必要があります。

■質問を仕事に必要な内容へそろえる
質問項目は、職務遂行や適性の確認に必要な内容にします。性的な経験、身体的特徴に関する発言、性的な冗談などを、場を和ませるための会話として認めないようにします。
結婚や家族に関する質問などは、性的な言動に当たるかという問題だけでなく、公正な採用選考や差別防止の観点からも点検が必要です。質問を判断に迷う場合は、採用担当者が一人で使い続けず、会社の質問集を見直しましょう。

求職者が使える相談窓口を知らせる

社内イントラネットだけに窓口を載せても、応募者や実習参加者は閲覧できません。採用ページ、面接案内メール、インターン・実習の受入案内など、本人が受け取れる方法で周知します。[2]

案内には、対象となる相談、連絡先、受付方法、プライバシー保護の方針などを記載します。社内の担当者は、誰が受信し、誰が対応を判断するかを把握しておきます。

採用担当者自身が相談の対象になることもあります。その担当者を経由しないと相談できない仕組みを避け、別の担当者や外部窓口へ連絡できる経路を検討してください。

会社の予防方針として、相談、性的な要求の拒否、調査協力等を理由に採否や実習評価で不利益に取り扱わないことを明確にすると、相談しやすさにつながります。法律が直接定める従業員の調査協力等を理由とする不利益取扱い禁止と、会社が求職者等に設ける保護方針は、整理して規定します。

相談を受けた後の対応手順

①安全と活動継続の希望を確認する
まず、相手との接触が続いていないか、体調への影響はないか、どの方法で連絡してよいかを確認します。実習先や学校に連絡する場合も、目的と共有範囲について本人に説明し、意向を踏まえて進めます。
行為者とされる面接官や指導者からの連絡をいったん止める、面談担当者を変更するなど、必要な保護を検討します。相談者が応募や実習を続けたいのかも、本人の希望を聞いてください。

②当事者を分けて事実関係を確認する
相談者と行為者とされる人の双方から、原則として別々に確認し、メール等の資料や第三者の説明も整理します。先に評価や処分を決めてから話を合わせる進め方は避けます。
確認できなかったことがある場合も、それだけで虚偽の相談と決めつけないでください。再発防止のための周知や、面談方法の改善が必要なことがあります。

③行為者への措置と再発防止を決める
事実が確認された場合は、就業規則等に基づく適正な措置を検討します。「セクハラなら一律に懲戒解雇」とするのではなく、事実、規程の根拠、行為の程度、処分の相当性を確認します。
経営者・役員については、雇用される従業員と同じ懲戒手続が使えるとは限りません。指針もこれらの者への適切な対応を望ましい取組として示しています。会社の予防方針では役員も対象とし、独立した相談・判断経路を設けることをお勧めします。[2]

よくある質問

〇採用予定がなくても実習を受け入れれば関係しますか
教育実習や看護実習等は、指針に求職活動等の例として挙げられています。自社への採用応募があるかだけで対象を判断しないでください。受入部署と採用部門の両方で、窓口や指導者への周知を確認します。

〇食事への誘いはすべてセクハラですか
すべての食事の誘いが直ちに該当するわけではありません。性的な言動と活動への支障、立場や経緯などを確認します。ただし、拒みにくい立場の相手を執拗に私的な食事へ誘う行為などは問題となり得るため、会社として予防ルールを決めてください。

〇人事担当者以外にも説明が必要ですか
現場の面接官、実習指導者、社員訪問を受ける人なども対象です。パート・契約社員等が指導を担当する場合もあります。職種や雇用形態にかかわらず、関わる人にルールを伝えます。

〇採用と実習の流れから見直しましょう
社会保険労務士法人イイズカ事務所では、求職者等セクハラ防止に関する規程、面談・SNSのルール、相談窓口案内、従業員向け周知文の整備をご支援します。
採用面接だけでなく、インターンや実習の受入れ方法もお知らせください。現在の応募者向け案内と社内規程を確認し、実際の運用に合う形をご提案します。

あわせて読みたい記事
• 2026年10月の法改正で会社に必要な対策
• 就業規則と相談窓口の整備手順
参考資料
• [1] 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
• [2] 厚生労働省告示第52号 求職者等セクシュアルハラスメント防止指針 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73ac0815&dataType=0&pageNo=1
法令・公表資料の確認日:2026年10月18日

自社の現場で使えるマニュアルを整える

社会保険労務士法人イイズカ事務所では、基本方針、現場対応マニュアル、悪質事案への対応手順、相談窓口案内の整備をご支援します。
ご相談の際は、現在の苦情対応ルール、店舗数や勤務体制、困っている事例をお知らせください。必要な項目を確認し、責任者が不在の時間帯も含めて、会社で実行できる形に整えます。
あわせて読みたい記事
• 正当なクレームとカスハラを分ける判断基準
• 就業規則と相談窓口の整備手順
• 義務化された対策の全体像
参考資料
• [1] 厚生労働省告示第51号 カスタマーハラスメント防止指針 4 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=75ac0814&dataType=0&pageNo=1
• [2] 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
法令・公表資料の確認日:2026年10月18日

関連記事
ランキング
タグ
お問い合わせ
Contact
お電話でのお問い合わせ
営業時間 9:00~17:00 ( 休業日 土・日・祝日 )