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2023年4月から中小企業にも適用開始 〜月60時間を越える時間外労働の割増率が50%になります〜

飯塚匡春

2023.02.18

働き方改革推進の取り組み[時間外労働に関する法改正]

働き方改革推進の取り組みのひとつとして国が進めている、時間外労働に関する法改正。

 

2023年4月1日からは、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、中小企業に対しても引き上げられます。

月60時間超残業の割増賃金率引き上げに備えましょう

中小企業の割増賃金率が引き上げられた背景

 

 

大企業は労働基準法改正により

 

2010年から1か月60時間を超えて時間外労働をさせた場合の

割増賃金率が50%以上に設定されていました。

 

 

この時は、中小企業の割増賃金率は25%以上のままとして

引き上げまでに猶予があったという背景があります。

 

2019年に施行された「働き方改革関連法」により

この猶予期間が廃止されることに決定しました。

 

これにより、2023年4月1日から

中小企業にも「月60時間以上の時間外労働について

割増率50%以上の割増賃金を支払う」義務が生じました。

 

これは企業の長時間にわたる時間外労働を抑制することを目的としてます。

 

特に月60時間超の時間外労働が多い中小企業では

従来と同じ働き方を続けると残業代がかさむため、

長時間労働を減らす取り組みの実施が必要になります。

 

 

★割増賃金率引き上げ後の時間外労働の計算方法

2023年4月1日からの割増賃金引き上げ後は、

1か月の起算日からの時間外労働時間数を累計して

60時間を超えた時点から50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

 

〜以下の条件での時間外労働の計算を考えてみましょう〜

 

<割増賃金率引き上げ後の時間外労働の条件>

・1か月の起算日は毎月1日

・時間外労働の割増賃金率

 60時間以下・・・25%  60時間超・・・・・50%

・深夜残業/休日労働はない  

 

 

1か月のうちの

1日~23日(日曜日は3回、勤務したのは20日)までの

時間外労働時間が60時間…割増率25%                                 

24日~31日(日曜日は1回で、勤務したのは6日)が

30時間の場合…割増率50%

 

この条件で、1時間当たりの賃金が2,000円だとすると、次の計算で残業代を求めます。

 

60(時間)×1.25×2,000円=150,000円  30(時間)×1.50×2,000=90,000円  90,000円+150,000円=240,000円

深夜・休日労働の取扱いの変更点

割増賃金率が50%に引き上げられた後は、

時間外労働が月60時間を超えた時の深夜労働・休日労働の割増賃金も変動します。

割増賃金率引き上げ後の深夜・休日労働の取り扱いの変更点をそれぞれ解説します。

 

 

[ 深夜労働との関係 ]

月60時間を超える時間外労働を、

深夜22:00~5:00の時間帯に行わせる場合、深夜の割増賃金率は以下のようになります。

 

25%以上(深夜割増の割増賃金率)+50%以上(時間外割増賃金率)=75%以上

 

!例えば、時間外労働が既に月60時間を超えていて割増賃金率は

50%、深夜割増賃金率25%、1時間あたりの賃金2,000円、

9:00~25:00まで労働した場合で残業代を求めると以下のようになります。

 

・9:00~18:00まで 残業代なし

・18:00~22:00まで 時間外労働が4時間割増賃金率50%

・22:00~25:00まで 深夜割増+時間外労働が3時間 割増賃金率75%(25%+50%)

 4時間×2,000円×1.5=12,000円  3時間×2,000円×1.75=10,500円  12,000円+10,500円=22,500円

 

[ 休日労働との関係 ]

月の時間外労働が60時間を超えた後に休日出勤をした日があったとしても、

深夜勤務さえなければ通常の休日割増の割増賃金率35%のままです。

 

ただし、これは法定休日の場合で、

社内の公休日(会社が指定した休日)などの法定外休日に

月60時間を超えて時間外労働が発生した場合、

割増賃金率50%で残業代を計算します。

企業に求められる対応

中小企業に求められる対応をそれぞれ解説します。

 

【代替休暇(有給)を付与する】

月60時間を超える法定時間外労働を行った従業員の健康を確保するため、

引き上げ分の割増賃金の支払の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。

この代替休暇制度を導入するには、以下の内容を定める労使協定の締結が必要です。

 

[ 労使協定で定める事項 ]

①代替休暇の時間数の具体的な算定方法(換算率を何%にするかなど)
②代替休暇の単位
③代替休暇を与えることができる期間
④代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

 

参考:月60時間を超える法定時間外労働に対して、

使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

 

ただし、代替休暇を取得するかどうかは従業員に委ねられており、利用を強制することはできません。

また、代替休暇を与える期間には定めがあり、

法定時間外労働が1か月60時間を超えた月の末日の翌日から

2か月間以内の期間で与えなくてはなりません。

 

 

・代替休暇の時間数を求める計算

代替休暇の時間数は、

1か月60時間超の法定時間外労働時間に対する引上げ分の割増賃金額に対応する時間数となります。

 

〜代替休暇の時間数は以下の計算式で求めます。〜

代替休暇の時間数=(1か月の法定時間外労働時間-60)×換算率※

※「代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金率」から

「代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率」を引いた数値。

 

時間外労働の割増賃金率が25%、

60時間超の時間外労働の割増賃金率50%の場合、

換算率は1.50-1.25=0.25

 

!例えば、月80時間の時間外労働をした場合、

60時間を超えた20時間分に換算率をかけることで代替休暇の時間数を算出できます。

 

換算率が0.25%だった場合、

20時間×0.25=5時間 の代替休暇の時間数が算出できます。

 

 

・代替休暇の単位

代替休暇は従業員が休息できるよう、

1日、半日のいずれかの単位で与える必要があります。

また、1日の所定労働時間が8時間で、

代替休暇の時間数が10時間ある場合など、2時間分の端数が出る場合、

労使協定で定めていれば他の有給休暇と合わせて有給休暇を取得することが可能です。

 

例:8時間分を1日の代替休暇、2時間分を時間単位の有給休暇と合わせて半日の休暇とする

 

 

【割増賃金率の50%に引き上げて賃金を支払う】

代替休暇を活用しない場合は、

そのまま1か月60時間を超える時間外労働に対し、

割増賃金率50%以上の割合で計算した割増賃金を支払います。

就業規則の変更

1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金率と1か月の起算日については、

労働基準法第89条第1項第2号に定める

「賃金の決定、計算及び支払の方法」に関するものです。

 

この部分に変更がある場合は、

割増賃金率50%の引き上げに合わせて

就業規則自体を変更し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

 

 

★割増賃金率が引き上げられた場合のモデル就業規則★

(割増賃金)

第○条時間外労働に対する割増賃金は、

次の割増賃金率に基づき、次項の計算方法により支給する。

 

(1)1か月の時間外労働の時間数に応じた割増賃金率は、次のとおりとする。

この場合の1か月は毎月1日を起算日とする。

 

①時間外労働60時間以下・・・・25%

②時間外労働60時間超・・・・・50%

 

(以下、略)

まとめ

月60時間以上の時間外労働が常態化している企業は、

早めの人員の採用計画や、特に残業代計算の方法の変更への対応や、

代替休暇等の活用を進める必要があります。

 

時間外労働に関する自社の状況を客観的に把握した後は、

システムを活用しながらDX化を進めて、業務量の見直しや残業の申請制導入などの対応を検討しましょう。

 

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