✅ この記事の目的
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2025年4月から施行される改正育児・介護休業法の内容をわかりやすく解説
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それに連動して厚生労働省が拡充する**両立支援等助成金「柔軟な働き方選択制度等支援コース」**の仕組み・対象・申請方法を丁寧に解説
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対象となる中小企業・社会保険労務士・人事担当者向けに、実務的な活用方法や注意点、成功のコツを具体例で紹介
🧑⚖️ 2025年改正「育児・介護休業法」のポイント(施行:2025年4月10月)
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2025年4月に、育児・介護休業法が改正され、以下のような大きな変更が予定されています:
1. 子が3歳になるまでの「柔軟な働き方」の導入が義務化に近づく
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対象:すべての事業主
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子が3歳未満の労働者に対して、以下のいずれかの制度を導入する義務
① テレワーク制度
② 時差出勤制度
③ フレックスタイム制度
④ 短時間勤務制度(既存) -
「選択肢の提供」がキーワード。企業は複数の制度から選ばせるよう求められる。
2. 労使協定で定めれば除外できる労働者の範囲の明確化
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入社1年未満や週の所定労働日数が少ない者は、労使協定により制度適用外とすることができるが、要件が厳格化。
3. 努力義務としての情報提供・支援強化
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企業は、育児や介護と仕事の両立を希望する社員に対し、制度の情報提供・相談体制を整えることが求められる。
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💡背景:なぜ育児・介護と柔軟な働き方が今重要なのか?
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出生数が過去最低水準:2023年は75万人を下回る見通し
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出産後の退職率:正社員女性の約3割が第一子出産を機に退職
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共働き家庭が増加する中で、柔軟な働き方へのニーズは高まり続けている
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💰 2025年度「両立支援等助成金 柔軟な働き方選択制度等支援コース」とは?
厚生労働省が実施する「両立支援等助成金」の中で、2025年度に新設・拡充されるのが、
**「柔軟な働き方選択制度等支援コース」**です。
🎯 対象となる企業(要件)
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雇用保険適用事業所であること
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中小企業事業主であること(資本金や従業員数による要件あり)
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雇用管理制度を就業規則等に明記して導入していること
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対象労働者が制度を実際に利用していること
✅ 支給対象となる「制度導入」の具体例
以下のいずれかの制度を育児・介護との両立支援の観点から導入し、実際に従業員が利用した場合に支給されます。
制度区分 | 支給対象例 |
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① テレワーク制度 | 子育て・介護中の社員が在宅勤務を選べる制度 |
② フレックスタイム制度 | 育児保育時間に合わせて始業終業時刻を調整可能に |
③ 時差出勤制度 | 出勤・退勤時間をずらすことを制度化 |
④ 短時間勤務制度の拡充 | 育児短時間勤務の所定時間を柔軟に設定 |
⑤ その他、両立支援に資する制度 | 週休3日制、時間単位の年次有給休暇制度 など |
に注意が必要です。必ず「交付決定通知」を受けてから、取組を開始してください。
💵 支給額
支給区分 | 支給額(中小企業) |
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制度導入・実施助成 | 1制度あたり 最大20万円(最大3制度で60万円) |
就業継続助成(継続利用) | 1人あたり 最大20万円(最大3人まで) |
合計 | 最大120万円の支給可能 |
📝 申請の流れ
① 制度の導入と就業規則等への明記
→ 例:テレワーク勤務制度の条文を就業規則に記載
② 実際に制度を利用する対象社員を特定
→ 「子が3歳未満の社員」など、対象条件を満たす必要あり
③ 申請書類の提出(制度導入後6か月以内)
→ 「導入・実施計画」「実績報告書」「就業規則の写し」など
④ 審査・支給決定通知
→ 支給まで2〜3ヶ月程度かかる見込み
📈 成功事例:酒造会社(従業員12名)
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課題:若手女性社員が出産後に退職リスクあり
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対応:短時間勤務制度と時差出勤制度を導入
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効果:育児中の女性社員が継続就業、さらに若手採用にも好影響
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助成金:導入・実施助成+就業継続助成で合計80万円を受給
これらの取組を組み合わせ、従業員が安心して働ける職場環境づくりを実現しましょう。
👷♀️ 成功する活用ポイント(中小企業向け)
● 就業規則・社内制度の明文化が必須
助成金の申請には「制度を正式に導入していること」が前提。社労士の助言を受けて、制度条文の整備を行いましょう。
● 制度利用の実績が求められる
実際に社員がその制度を利用したことがないと支給されません。社員のニーズを把握し、使いやすい制度運用を意識。
● 制度導入の前に労使協議を実施
社内の納得を得るためにも、導入前に労使間の話し合い・説明会を行うとスムーズ。
📘 申請に必要な主な書類一覧(例)
書類名 | 備考 |
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制度導入・実施計画書 | 制度の詳細と導入時期を記載 |
実施報告書 | 利用者の実績、運用内容などを報告 |
労働条件通知書・就業規則 | 導入制度を反映していること |
出勤簿・勤務実績記録 | テレワークや短時間勤務の実施証拠 |
💼 社会保険労務士としての支援ポイント
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制度導入の法的チェック
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助成金申請書類の作成・添削
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就業規則の条文化支援
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制度運用に関する社員説明資料の作成支援
最後に:中小企業こそチャンス!
2025年の育児・介護休業法改正は、多くの中小企業にとって大きな課題となる一方、
両立支援等助成金の活用により、コストを抑えつつ職場改革を進める絶好のチャンスでもあります。
社内に育児・介護世代の社員がいる企業、人材定着や採用に悩んでいる企業は、
この機会に「柔軟な働き方」を導入し、人が辞めない職場づくりに踏み出しましょう。