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社会保険労務士

ハラスメント対策の就業規則と相談窓口 法改正に対応する整備手順

飯塚匡春

2026.10.25

ハラスメント対策の就業規則と相談窓口|2026年法改正の整備手順

22026年10月1日からのカスハラ・求職者等セクハラ対策では、規程、現場のマニュアル、相談窓口の案内をつなげて整えることが大切です。[1][2][3]

就業規則に禁止条項を追加しても、応募者が相談先を知らなければ相談は届きません。窓口を設けても、担当者が事実確認や保護措置を決められなければ対応が止まります。

この記事では、現在の就業規則を生かしながら、何を追加・修正し、どの順番で導入すればよいかを解説します。

就業規則を必ず全面改定しなければならないのか

今回の法改正によって、すべての会社に同じ条文への全面改定が求められるわけではありません。既存の規程で対応できている部分と、不足している部分を分けて確認します。

求職者等へのセクハラについては、行為者に厳正に対処する方針と対処内容を、就業規則その他の服務規律等を定めた文書に規定し、従業員に周知する必要があります。

既存の懲戒規定が適用されることを明確化する方法も、指針に示されています。[3]

カスハラ対策では、顧客に就業規則上の懲戒処分をするわけではありません。従業員を守る方針、現場の対処内容、悪質事案への対応体制などを整えます。また、自社の従業員が取引先等に加害行為をしないための教育や服務規律も、併せて検討してください。

規程で確認したい四つの箇所

☑対象者と対象場面
「職場の従業員同士」だけに限定されていないかを確認します。求職者等には応募者だけでなく、会社説明会、社員訪問、インターン、各種実習の参加者等も含まれます。
カスハラでは、顧客、取引先、施設利用者や家族等からの被害が想定されます。店舗の外や電話・オンラインでの言動も、業務との関係から判断することを明記すると、報告漏れを防ぎやすくなります。

☑服務規律と行為者への対処
禁止する行為を、従業員が理解できる言葉で示します。求職者等への性的な質問、接触、性的な関係の要求、執拗な私的な誘いなどを具体化します。面談・連絡ルール違反や、報復、口止め、調査妨害なども確認対象です。
処分を検討する場合は、現行の懲戒事由と種類に接続します。新しく追加した懲戒事由を、施行前の行為にそのまま遡って適用しないこと、事実確認と本人の説明の機会を確保することにも注意してください。懲戒の合理性・相当性は労働契約法第15条等を踏まえて判断します。[5]

☑相談者等の保護
カスハラの相談・調査協力等を理由とする従業員への不利益取扱いを禁止し、求職者等セクハラの事実確認等に協力した従業員の保護も定めて周知します。[2][3]
さらに、会社の予防方針として、求職者等が相談したこと、性的な要求を断ったこと、調査に協力したことを理由に採否や実習評価で不利益に取り扱わないことも明確にします。法令上の義務の対象と、会社が設ける保護範囲を整理すると、条文の意味が伝わりやすくなります。

☑プライバシーと記録の管理
相談者だけでなく、行為者とされる人や関係者の情報も適切に扱います。閲覧できる担当者、保存場所、共有の判断方法を決めてください。
窓口担当者が「絶対に誰にも伝えない」と約束すると、安全確保や事実確認に必要な共有が難しくなります。対応に必要な範囲で扱うことを説明し、共有する目的や相手について、可能な限り本人に伝える運用にします。

相談窓口は既存の窓口と共通にできる

パワハラ・セクハラ等の既存窓口と一体で運営することは考えられます。ただし、今回の相談を扱える担当者と手順がそろっていることが前提です。[2][3]

確認事項 従業員向け 求職者・実習参加者等向け
案内を置く場所 社内掲示、配布文、社内システム等 採用ページ、案内メール、受入資料等
連絡手段 社内外から利用可能な電話・メール等 社員用アカウントを持たずに使える方法
相談しにくい場合 上司等を通さない代替経路 面接官・指導者を通さない経路
受付後の配慮 安全、体調、勤務上の対応 接触回避、面談や実習の継続方法

人事担当者の名前だけを掲載する場合も、不在時の対応を決めてください。匿名相談を受け付ける運用では、連絡や事実確認に限界が生じる場合があることも説明します。

相談を受けた人が行うことを決める

受付担当者には、聞き取りの方法と引継ぎ先を説明します。最初からすべての事実を確定する必要はありません。

1. 差し迫った危険と心身の状態を確認する。

2. いつ、どこで、誰から、何があったかを分かる範囲で聞く。

3. 本人が希望する連絡方法と対応を確認する。

4. 情報共有の範囲を説明し、責任者につなぐ。

5. 次に連絡する予定を伝え、対応を記録する。

初回連絡を「2営業日以内」などと定める場合、それは社内の運用目安です。法律が一律に定めた期限ではありません。緊急性の高い事案に、通常の返信期限まで対応しない運用は避けます。

就業規則の変更から周知までの手順

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成・変更する際、過半数労働組合、ない場合は適正に選出した過半数代表者の意見を聴き、意見書を添えて所轄労働基準監督署へ届け出る必要があります。人数は会社全体だけでなく、事業場単位で確認します。[4]

別冊のハラスメント規程でも、就業規則の一部となる場合は、その位置付けと届出を確認します。労働条件の不利益変更を含む場合は、意見聴取・届出だけで足りると考えず、労働契約法上の要件も検討してください。[5]

社内では、規程案の整合確認、必要な意見聴取・届出、従業員への周知を進めます。掲示・備付け、書面交付、常時閲覧できる社内システム等を活用し、管理職や採用関係者には役割に合わせて説明します。

従業員10人未満の事業場で就業規則の作成・届出義務がない場合も、今回の防止措置義務は対象です。窓口と対応ルールを整え、従業員に伝えてください。

導入前に確認したいチェックリスト

〇
• 規程とマニュアルで、対象者・禁止行為・担当者が一致している。
• カスハラの報告先と担当交代の手順が決まっている。
• 特に悪質な事案の判断権限と専門機関への連絡方法が決まっている。
• 面談の時間・場所・体制と、使用する連絡手段を定めている。
• 求職者等へ方針、面談等のルール、相談窓口を案内している。
• 上司や面接官が関係する相談を、別経路で受け付けられる。
• プライバシー保護と不利益取扱い禁止を周知している。
• 必要な就業規則の意見聴取・届出・周知を行っている。
• 相談用メールや電話が実際に届き、担当者不在時も引き継げる。
• 記録の閲覧権限と保管方法、運用を見直す担当者が決まっている。
チェックが付かない項目は、担当者と完了予定を決めます。社長、現場責任者、人事担当者が同じ理解で動けるかを、簡単な想定事例で確認すると、運用上の不足を見つけやすくなります。

よくある質問

〇顧問社労士の名前を外部相談窓口に載せてよいですか
顧問契約があっても、従業員や求職者等からの直接相談が自動的に業務範囲に入るわけではありません。受付方法、対象者、対応時間、会社への報告範囲、費用等を、委託先と事前に合意してください。

〇外部窓口に委託すれば会社で対応しなくてよいですか
受付を外部へ委託しても、会社による安全確保、事実確認への協力、就業上の配慮、処分や再発防止の判断等は残ります。外部窓口から誰に連絡し、社内の誰が決めるのかを明確にしてください。

〇就業規則を届け出れば対応は完了ですか
届出と周知、窓口の運用は別の作業です。従業員が内容を確認でき、求職者等が窓口を利用できることまで確認します。担当者の退職・異動時にも情報を更新してください。

あわせて読みたい記事

• 義務化されたカスハラ・求職者セクハラ対策の全体像
• カスハラ対策マニュアルと悪質事案への対応
• 採用面接と実習で守るセクハラ防止ルール
参考資料
• [1] 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
• [2] 厚生労働省告示第51号 カスタマーハラスメント防止指針 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=75ac0814&dataType=0&pageNo=1
• [3] 厚生労働省告示第52号 求職者等セクシュアルハラスメント防止指針 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73ac0815&dataType=0&pageNo=1
• [4] 北海道労働局「就業規則を作成・届出、周知しましょう」https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku02/kantokuka_hourei_02/_119904.html
• [5] 厚生労働省「労働契約法の施行について」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb8530&dataType=1&pageNo=1
法令・公表資料の確認日:2026年10月18日

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