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社会保険労務士

月給25万円でも最低賃金割れ? 固定残業代込みの給与で確認すること

飯塚匡春

2026.11.05

社労士が解説する月給25万円でも最低賃金割れ? 固定残業代込みの給与で確認すること

2026年11月1日現在
「月給25万円を払っているから、最低賃金は問題ないはず」。固定残業代を含む給与では、総支給額だけで判断すると見落としが起きます。最低賃金の確認には、時間外労働に対する固定残業代などを除いた賃金を使います。 正社員でも、試用期間中でも確認が必要です。[1][3]
東京都の地域別最低賃金は、2026年10月1日から時間額1,280円です。11月は、改定後の給与計算と求人票を点検する機会です。この記事では、架空の給与例を使って確認方法と修正例を説明します

最低賃金は総支給額をそのまま割って確認しない

毎月の基本給や、最低賃金の対象となる手当を確認し、対象外の賃金を除いて比較します。税金・社会保険料を引いた後の手取り額で判断するものでもありません。[1]

最低賃金の確認に使う賃金の整理

賃金の例 取扱い 確認する点
基本給 対象 所定の労働に対する賃金
職務手当・資格手当など 支給内容で判断 通常の労働の対価であるかを確認
時間外労働に対する固定残業代 対象外 通常賃金と区分され、固定残業代に当たることを確認
通勤手当・家族手当・精皆勤手当 対象外 手当の名称だけでなく実際の性質も確認
賞与・臨時に支払う結婚手当など 対象外 毎月の賃金と区別する

時間外・休日の割増賃金や、深夜の割増部分も対象外です。なお、ある手当が本当に固定残業代として認められるかは、契約書の記載、会社の説明、勤務実態等によって判断されます。「残業手当」という名称だけで、機械的に区分できるとは限りません。[1][4]

月給25万円が最低賃金を下回る計算例

次の条件を想定します。東京都で働き、適用される最低賃金は地域別最低賃金の1,280円。基本給21万円、法定時間外労働25時間分の固定残業代4万円、その他の手当はなし。年間所定労働時間は2,040時間で、1か月平均所定労働時間は170時間です。固定残業代としての区分が有効である前提とします。

総支給25万円の内訳と判定

項目 金額・時間
基本給 210,000円
固定残業代 40,000円(法定時間外25時間分)
総支給額 250,000円
1か月平均所定労働時間 2,040時間 ÷ 12か月 = 170時間
最低賃金の比較に使う時間額 210,000円 ÷ 170時間 = 約1,235.29円

約1,235.29円は1,280円を下回ります。総支給25万円を170時間で割った約1,470.59円では、正しく確認できません。この条件では、総支給25万円でも最低賃金に足りません。月給の場合は、対象賃金を1か月平均所定労働時間で割って確認します。[2]

分母の170時間は、この架空の会社の年間カレンダーから計算した数字です。すべての会社で使える数字ではありません。雇用契約、就業規則、年間の休日設定等から、その従業員に適用する平均所定労働時間を確認してください。実際に残業した時間を、この分母へそのまま足す計算でもありません。

1この例を修正すると基本給はいくら必要か

必要な通常賃金は、1,280円 × 170時間 = 217,600円です。元の基本給21万円との差は7,600円となります。他の対象手当がないこの例では、基本給を21万7,600円に引き上げる方法が考えられます。

固定残業25時間分を維持する修正例

項目 修正前 修正後の例
基本給 210,000円 217,600円
固定残業代 40,000円 40,000円
総支給額 250,000円 257,600円
最低賃金の比較時間額 約1,235.29円 1,280円

修正後の通常賃金の時間額は1,280円。法定時間外労働の割増率を25%とした場合、25時間分は1,280円 × 1.25 × 25時間 = 40,000円です。この例では固定残業代4万円と一致します。深夜・法定休日労働はなく、月60時間を超える法定時間外労働もない前提です。割増率や計算基礎が異なる場合は、別途計算します。[6]

改定後の対象期間に不足が生じている場合は、今後の給与設定を変えるだけでなく、過去の不足額と時間外割増賃金等の再計算も必要です。最低賃金を下回る合意をしていても、そのまま有効になるわけではありません。

基本給を上げるときは固定残業代と契約書も確認

基本給が変わると、残業代の計算単価も変わります。従来と同じ時間数を固定残業代の対象にする場合、金額が足りるかを再計算してください。最低賃金の計算で除く通勤手当等でも、割増賃金の基礎では取扱いが異なることがあります。二つの計算を混同しないことが大切です。
総額を据え置いて基本給と固定残業代の配分を変える場合も、会社の判断だけで書き換えてよいとは限りません。労働条件変更の合意、不利益変更の問題、就業規則との関係を確認し、説明と必要な手続きを行います。[

会社が点検したい5つの項目

1. 勤務地に適用される地域別最低賃金と、該当する場合は特定最低賃金を確認する。両方が適用される場合は高い額を使う。
2. 給与の各項目を分け、最低賃金の対象となる賃金と対象外の賃金を整理する。
3. 会社のカレンダー等から1か月平均所定労働時間を確認し、従業員ごとに比較する。
4. 固定残業代の金額・対象時間・対象とする労働の種類と、超過分等の追加支給を確認する。
5. 給与設定、労働条件通知書、賃金規程、求人票の記載をそろえる。必要な不足額を精算する。
固定残業代を設けていても、労働時間の把握や、法定時間外労働等に必要な36協定、時間外労働の上限への対応は別に必要です。固定残業時間分まで働くことが自動的に義務になるわけでもありません。[4][6]

【よくある質問】
・固定残業代の金額だけ増やせば最低賃金に対応できますか
時間外労働に対する固定残業代だけを増やしても、最低賃金の比較に使う通常賃金は増えません。まず、対象となる基本給や手当の額を確認してください。[1]

・固定残業代を払っていれば追加の残業代は不要ですか
法定の方法で計算した割増賃金が固定残業代を上回れば、差額の支払いが必要です。対象時間数を超えた分だけでなく、深夜・休日分の扱いや、対象時間内でも金額が不足していないかを確認します。[4]

・試用期間中なら最低賃金を下回ってもよいですか
試用期間・研修期間という理由だけで、最低賃金を下回ることはできません。法令上の減額特例許可等がない通常のケースでは、試用期間中も最低賃金以上の支払いが必要です。[3]

【給与と固定残業代の点検はイイズカ事務所へ 】
イイズカ事務所では、最低賃金の確認、固定残業代の計算・運用の見直し、賃金規程と労働条件通知書の整備をご相談いただけます。給与一覧と会社の所定労働時間を基に、対象者と必要な対応を整理します。
最低賃金・固定残業代・賃金規程について相談する

出典と参考資料
[1] 厚生労働省 最低賃金の対象となる賃金
[2] 厚生労働省 最低賃金額以上かどうかを確認する方法
[3] 東京労働局 ハローワーク木場 東京都の最低賃金は令和8年10月1日から1,280円
[4] 厚生労働省 スタートアップ労働条件 固定残業代のQ&A
[5] 厚生労働省 最低賃金制度とは
[6] 厚生労働省 労働条件・職場環境に関するルール
[7] 厚生労働省 労働契約 労働条件の変更等

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