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労基署の調査で何を見られる? 勤怠・残業代・36協定を会社が点検する方法

飯塚匡春

2026.11.07

労基署の調査で何を見られる? 勤怠・残業代・36協定を会社が点検する方法

2026年11月1日現在
「労働基準監督署から書類を持参するよう連絡が来た」「突然の訪問に、担当者が何を説明すればよいか分からない」。労基署の調査に備えるには、書類をそろえるだけでなく、勤務の記録、給与計算、社内ルールが一致しているかを確認することが必要です。
2026年11月の過重労働解消キャンペーンでは、長時間労働が疑われる事業場等への重点監督が行われます。重点確認事項は、36協定、賃金不払残業、労働時間の把握、長時間労働者の健康確保措置などです。[1]
本記事では、経営者・人事担当者に向けて、労基署が確認する事項、準備する資料、是正を求められた場合の進め方を説明します。通知が届いた会社だけでなく、調査前に勤怠・給与計算を見直したい会社にも役立つ内容です。

労基署の調査は事前連絡がある場合も突然の訪問もある

労働基準監督官は、労働基準関係法令に基づき、事業場の帳簿や設備を確認し、使用者や労働者に事情を聴くことができます。定期的な監督のほか、労働者からの情報等を契機に行われる場合もあり、必ず事前通知があるとは限りません。[2]

連絡があったときは、対象の事業場、日時、指定された資料と期間、出席する担当者を確認します。調査の連絡だけで、誰かが通報した、会社の違反が確定したなどと決め付けることは避けましょう。

日頃から、勤怠、給与、雇用契約、36協定の保管先と担当者を整理しておくと、問い合わせを受けた際に必要な情報を集めやすくなります。経営者しか給与の決め方を説明できない、退職した担当者しか記録の場所を知らない、といった状態も見直したい点です。

調査に備えて準備したい主な書類

労基署の調査で準備する資料と主な確認事項

以下は、労務関係の調査を想定した準備例です。すべての調査で同じ書類が必要になるわけではありません。提出する書類、対象期間、提出方法は、労基署からの指定を確認してください。

資料の種類 主な確認事項
労働条件通知書・雇用契約書 労働時間、休日、賃金等と実際の運用
就業規則・賃金規程 所定労働時間、割増賃金、休暇等の定め
36協定と届出の記録 有効期間、対象業務、延長時間、特別条項の運用
勤怠記録・シフト表・勤務予定表 実際の始業・終業時刻、休憩、休日、勤務予定との違い
賃金台帳・給与明細・計算資料 記録した労働時間と支給額の対応、賃金の計算方法
その他の指定資料 年次有給休暇の管理、健康診断、長時間労働者への対応等

勤怠システムの画面だけでなく、出力した記録が給与へどう反映されるかも説明できるようにします。従業員や拠点によって計算方法が違う場合は、その理由も整理してください。

勤怠記録とパソコンのログに差があるときは実態を確認する

次は当事務所が作成したモデル文例です。相手を刺激する可能性や現場の危険度を踏まえ、責任者が判断してください。身体への危険があるときは、説明を続けるより避難・応援要請を優先します。
【苦情の内容を確認するとき】

「ご不便をおかけした点を確認いたします。どの対応について、どのようなご希望がおありか、お聞かせいただけますか。」
最初に不満や要求の内容を確認し、調査が必要な点と、その場で回答できる点を整理します。事実を確認する前に、返金や賠償を無条件に約束することは避けます。

【暴言や土下座要求が続くとき】
「タイムカードは18時退勤、パソコンは20時まで使用」という記録があれば、その差を放置しないことが大切です。厚生労働省のガイドラインは、自己申告と入退場・パソコン使用等の記録に著しい差がある場合、実態を調べ、必要な補正を行うことを求めています。[4]
ただし、パソコンが起動していた時間のすべてが、そのまま労働時間になるとは限りません。業務のメール送信、資料の編集、上司の指示、私的利用や離席の状況などを確かめます。逆に、パソコンを使わない清掃、引継ぎ、着替え、待機等にも、労働時間に当たるものがあります。
例えば介護・福祉施設なら、夜勤前後の申し送りや記録作成、警備業なら待機や引継ぎなど、業務ごとの実態を確認します。「残業申請がないからゼロ」「休憩欄に60分とあるから実際も休憩した」と、記載だけで処理しないことが必要です。[4]

36協定は届出だけでなく実績と運用を点検する

法定時間外・法定休日労働を行わせる場合には、原則として有効な36協定の締結・届出が必要です。届出済みでも、有効期間が切れている、対象者や業務が合っていない、協定で定めた時間を超えているといった問題は残ります。
一般的な上限規制では、時間外労働は原則月45時間・年360時間です。特別条項があっても、年720時間以内、時間外・休日労働の合計が単月100時間未満、複数月平均80時間以内などの上限があり、月45時間を超えられる回数にも制限があります。1年単位の変形労働時間制の一部や、業務・事業による特例等は個別の確認が必要です。[5]
特別条項を使う際の手続きや健康福祉確保措置も確認しましょう。「年間の残業代を払っているから協定の超過は問題ない」という扱いにはできません。適正な賃金支払いと、適法な時間外労働の管理は、それぞれ必要です。

残業代は時間数と計算の両方から確認する

割増賃金の点検では、時間外・休日・深夜を区分し、計算基礎に含める賃金、割増率、支給済みの金額を確認します。固定残業代を設けている会社も、適法に計算した必要額と比較し、不足があれば追加支給が必要です。[6]
よく見直しの対象になるのは、勤怠の修正が給与へ反映されていない、基本給を上げたのに残業単価が以前のまま、毎日の実労働時間を一律に切り捨てている、といった運用です。手当を計算基礎から除けるかも、名称だけでは決められません。
給与ソフトの設定を確認する際には、実際の計算例を一人分取り出し、勤務記録から支給額まで追ってみてください。設定変更が必要な場合は、誰の、いつの期間まで影響するかを確認してから修正します。会社独自のシフトや賃金制度がある場合ほど、入力担当者だけの判断にしないことが大切です。

是正勧告を受けたら期限と改善内容を整理する

法違反等が確認されると、是正勧告や指導が行われます。指摘を受けた場合は、対象者、対象期間、求められている是正内容、報告期限を確認してください。内容に不明点があるときは、理解しないまま報告書を作らず、担当監督官へ確認します。[2][7]
例えば賃金の不足なら、計算方法の確認、対象者と金額の算定、支払い、計算設定の修正まで進めます。報告には、実施した改善と確認できる資料を対応させ、今後どのように再発を防ぐかを整理します。資料収集等に時間を要する場合も、期限を放置せず早めに担当監督官へ相談します。
調査に合わせて記録を書き換えたり、実施していない手続きを過去の日付で行ったように装ったりしてはいけません。記録の誤りを訂正する必要がある場合は、元の記録と確認根拠、訂正の経過が分かる形にします。

社労士に依頼できるのは当日の説明だけではない

社労士には、調査前の資料整理、勤怠と給与の照合、法令・規程との確認、是正報告に向けた支援を相談できます。調査対応をきっかけに、36協定、就業規則、賃金規程、給与ソフトの運用をそろえることも重要です。
毎月の給与計算を外部へ委託していても、会社が正しい勤怠や手当の情報を渡さなければ、誤りが残ることがあります。会社が確認する項目と、社労士が計算・点検する項目を明確にし、締日後に修正があった場合の連絡方法も決めましょう。定期的な点検を労務顧問の相談事項にすることで、担当者の交代時にも運用を引き継ぎやすくなります。

よくある質問

【社労士がいれば会社の担当者は調査に出なくてよいですか】
会社の実態を説明できる担当者の協力が必要です。社労士の支援を受ける場合も、誰が出席し、誰が何を説明するかを、労基署からの指定や調査内容に応じて確認してください。

【今から36協定を届ければ過去の残業も問題なくなりますか】
過去の協定未締結・未届出の状態が、後日の届出によって適法になるわけではありません。過去の実績と今後の運用を分けて確認し、必要な是正を進めます。[5][6]

【固定残業代の記事を読んで見直した会社も点検が必要ですか】
必要です。給与の内訳が整理されていても、実際の労働時間の把握、追加支給、36協定の範囲、健康確保措置まで整っているとは限りません。賃金の設定と実績管理を併せて確認します。

【労基署調査・勤怠と給与の点検はイイズカ事務所へ】
労基署から連絡が来た方は、通知内容、対象期間、指定資料、回答期限をお知らせください。イイズカ事務所では、資料の整理、勤怠・賃金の確認、36協定や就業規則の整備、是正に向けた対応についてご相談を承ります。
調査前の点検もご相談いただけます。従業員数、勤務形態、給与計算の方法、困っている点を伺い、個別の点検、給与計算代行、継続的な労務顧問など、必要な支援範囲をご案内します。書類の準備だけで終えず、次の給与計算と勤務管理に改善を反映させるところまで考えましょう。
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出典と参考資料
• [1] 厚生労働省 過重労働解消キャンペーン https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/roudoukijun/campaign_00004.html
• [2] 厚生労働省 労働基準監督官の仕事 https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/law/kantokukan.html
• [3] 鳥取労働局 労働基準監督官の採用FAQ 調査内容と流れ https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/newpage_02460.html
• [4] 大阪労働局 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/hourei_seido/jikan2/kokuji/kokuji2.html
• [5] 厚生労働省 時間外労働の上限規制 https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html
• [6] 厚生労働省 労働条件・職場環境に関するルール https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/joken_kankyou_rule.html
• [7] 富山労働局 労働基準監督署へ提出する報告書について https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/houkokusyo.html
制度・公表資料の確認日:2026年11月6日

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